2014年3月22日土曜日

ビッグラボ化は研究の質を下げる

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今年度から始まるImPACT(革新的研究開発推進プログラム)は
予算総額550億円で5~10件のプロジェクトを採択する予定(期間は5年)。

単純計算で一件あたり50〜100億円。
一件一年あたり10〜20億円。

これはひどいことが起きそうです。
政府の人間は大きなお金をつっこめば、
大きな成果を得られると勘違いしているようです。

研究費とインパクトのある論文の出版数の関係の調査結果を紹介したいと思います。
NIHのサイトからの引用です。


Measuring the Scientific Output and Impact of NIGMS Grants
https://loop.nigms.nih.gov/2010/09/measuring-the-scientific-output-and-impact-of-nigms-grants/

横軸:研究費,縦軸:発表論文数

これをみると、年間の研究費が1億円(100万ドル)を超えると、研究成果数(赤折れ線グラフ)もその平均インパクトファクター(青折れ線グラフ)も減少傾向になります。

それが、年間10億円ともなるともっと悪くなるでしょう。

ビッグラボで何が起きるかというと、
まず、創造的な研究のマネジメントが非常に難しくなります。
研究というものは、一つ一つきちんと考える必要があるものです。
プロジェクトマネージャーの強力なコミットメントが必要な訳です。
しかし、組織が大きくなるとこれが不可能になり、生産性が驚くほど急落します。
抱える研究者の数は増えますが、意思の統一が困難になり、プロジェクトが進まなくなります。

プロジェクトマネージャとの意思疎通の問題だけではありません。
まず、研究を行う研究者が頭を使わずにお金で全て解決しようとしだします。
中村修二さんも言っていましたが、青色ダイオード開発の際、欧米の企業研究者は資金に糸目を付けずに研究していました。しかし、勝ったのはほとんど資金のない中村修二さんでした。お金がなかったのでほとんど全てゼロベースで開発したことが勝因だと言っていました。
その通りです、全てを把握していることほど、研究に必要なことはありません。
何か問題があれば、全て対応できるわけですから。

もう一つImPACTで気になった点。
政府は非連続なイノベーションをとうたっていますが、
真のイノベーションは思ってもいないところから生まれるものなのです。
年間2000万円で期間5年のプロジェクトを500件走らせた方が、非連続なイノベーションが起きるでしょう。


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